経営者は労務トラブルから企業を守るために、人事や労務に関する法律を正しく理解しておく必要があります。人事や労務に関する法律の基礎知識をご紹介します。法律を正しく理解し、企業を労務トラブルから守る助けにしてください。
労働基準法
労働条件に関する最低基準を定めた法律です。正社員のみならず、パートやアルバイトなどの従業員も含めてすべての労働者に適用されます。
労働契約において労働基準法の基準に達しない労働条件は、法律上当然無効であり、無効となった部分は労働基準法で定める基準が適用されます。
また、労働基準法は罰則付きの法律であるため、労働基準法違反の行為については、罰金刑や懲役刑などの刑事罰を科せられる場合がありますので、経営者が理解しておかないといけない法律です。
労働組合法
労働者の団結権や団体交渉権などを保証し、労働者の地位を向上するための法律です。労働基準法、労働関係調整法と並んで労働三法と呼ばれています。経営者側の不当労働行為を禁止し、労働協約の効力や団体交渉に関する刑事免責、正当な労働争議に関する民事免責など、労働者の権利を守るための規定が定められています。
この法律により、経営者は団体交渉(話し合い)の申し入れがあれば、交渉の場を設けなければなりません。さらに経営者には、誠実に交渉に対応する義務(誠実交渉義務)が課せられています。
このため、下記のような場合は誠実交渉義務に反するとみなされることがあります。
- 組合からの要求を拒否するだけで、その根拠となる資料や対案を示さない場合
- 交渉事項について決定権限のない者を出席させ、見せかけだけの交渉を行う場合
- 合意の前提条件として、合理性のない条件を提示して固執する場合
労働契約法
労働契約法は、労働者と会社が結ぶ労働契約の基本ルールを定めた法律のことです。この法律が制定される前は、労働条件の変更や解雇の合理性などで労働者と会社が争う場合には裁判所の過去の判例が判断の基準とされていました。しかし、この法律で労働契約上の労働者の権利や義務を規定することができ、雇用ルールが明文化されるようになりました。
また、この法律により1年単位の労働契約を何年も反復更新するような雇用の在り方に制限がかかり、5年を超えた段階で労働者の求めに応じて期間の定めのない契約(無期契約)に転換することが義務付けられました。無期契約に転換した場合は、原則として定年まで雇用する義務が生じます。
健康保険法
プライベートでの怪我や病気などについての給付内容を定めた法律です。怪我や病気で病院にかかったり、治療により働くことができなくなり休業したり、出産や死亡があった場合には、保険給付を受けることができます。
また、健康保険は加入している本人だけでなく、扶養家族も保険給付を受けることが可能です。この制度により、全国どこでも同じ費用で治療を受けることができます。
雇用保険法
労働者が失業した時などのセーフティネットとして、生活の安定と早期再就職の促進のための給付などについて定めた法律で、いわゆる失業保険と言われる「求職者給付」や育児休業期間中に収入を補てんする「育児休業給付金」などがあります。また、企業が活用できる各種助成金もこの法律により企画されています。
労働者災害補償保険法(労災保険)
仕事中の怪我や病気などについての給付内容を定めた法律です。経営者は従業員を安全・健康に働かせる義務(安全配慮義務)を負っています。よって、従業員の仕事中の怪我などについて経営者が費用負担しなければなりません。
しかし、費用負担が大きくなると現実的に補償が難しくなるため、経営者が補償すべき費用を保険の仕組みでカバーします。カバーされる内容は、治療費や休業した際の賃金補てん、その他遺族への補償など多岐にわたります。
厚生年金保険法
いわゆる“年金”に関する法律です。老後にもらう老齢年金、障害を負った状態になった場合に受けることができる障害年金、労働者が死亡した場合に遺族がもらう遺族年金の3つが給付の柱となっています。
日本の公的年金制度は、20~60歳の現役世代が支払った保険料を65歳以上の年金受取り世代に渡す、「世代と世代の支え合い」という考え方(賦課方式)を基本とした財政方式で運営されています。
大阪市で労務相談を承るフォレスト社会保険労務士事務所
これらの法律は、企業経営を続けるうえで知っておくべきものばかりです。しかし、多くの法律が存在するため、そのすべての法律の知識を正しく理解するのは簡単なことではありません。そんな時は人事や労務に関する法律知識に詳しい社会保険労務士にご相談ください。社労士の力を借りることで、多くの法律に関する正しい知識を得ることができます。
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