【判例】日本ケミカル事件(みなし時間外手当の有効性)

● 内 容

日本ケミカル事件(みなし時間外手当の有効性)  最高裁 平成30719

 

● 概 要

・会社は保険調剤薬局を運営し、従業員は薬剤師として勤務していた。

・会社は従業員に基本給461,500円、業務手当(みなし時間外手当)101,000円を支給していた。

・賃金規程に、「業務手当は時間外労働があったものとして支給する。」と記載されており、労使間で「業務手当は時間外労働30時間分として支給する」などの確認書が交わされていた。

・会社はタイムカードにて始業、終業時刻を確認していたものの休憩時間が不明で、また給与明細に時間外労働時間を記載する欄があったが記入もれがあり、実際の時間外労働時間の把握が不十分だった。

・これにより従業員は、みなし時間外手当は無効として残業代を請求した。

・高裁は従業員側の主張の通り、みなし時間外手当は無効で別途残業代を支払うことを求めたが、最高裁ではこの判断は誤りだとして差し戻した。(有効となる見込み)

 

● 解 説

一定の残業代をあらかじめ支給するみなし残業代(定額残業代、固定残業代とも言います。)は、中小企業を中心に多く取り入れられています。

制度は法的に問題ないのですが、みなし残業代を払っておけば、何時間残業させても追加の残業代は要らないという誤った運用が広がっていました。

これにより裁判所も神経質になり、ここ数年の裁判では“そこまで求めるの?”という理由でことごとく、みなし残業代が否定され会社が負けてきました。

 

この事件について高等裁判所でも、みなし残業代は残業の何時間分か、また実際に何時間残業したかを把握し、超過分を請求(支給)できる仕組みであることが求められるが、実態的にその仕組みが備わっていないので無効と判断しました。

 

しかし、最高裁では高等裁判所が無効と判断した理由は、みなし残業代を認める上での必須なものではないとし、その上で、ほぼ毎月みなし残業代でカバーできる程度に残業が収まっており、業務手当は時間外労働等に対する対価と雇用契約で定めているのだから、高等裁判所の判断は法令の解釈適用を誤った違法として差し戻しました。

 

今までの判例を踏まえると高裁の判断が常識だったので、かなりの驚きでしたが行き過ぎた労働者側の主張にブレーキがかかることは歓迎ですね。

 

但し、働き方改革関連法の中で月の残業時間は45時間以内と決まりましたので、今後は残業代ではなく、残業時間そのものについてチェックされる時代になりました。

今の内から無駄な残業時間の撲滅に取り組みましょう。

 

 

 

 

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