● 判 例
F社Z事業部事件(労働者のプライバシー保護) 東京地裁 平成13年12月3日
● 概 要
・女性従業員(X)は、F社Z事業部で勤務していた。
・Xは、事業部長(Y)から、一度時間を割いて部署の問題点などを教えてほしいと電子メールで依頼されるも、「単なる呑みの誘い」などとするメールを同僚に送信するつもりが、誤ってYに送信してしまった。
・その後、YはXのメールの監視を始め、Xが「Yのスキャンダルでも探して何とかしましょうよ」と同僚にメールし、Yをセクハラで告発しようとしていること等を知り警戒感を高めた。
・Xがパスワードを変更した後もIT部に依頼し、監視を続けた。
・Xは、Yが許可なしにメールを閲読したことを理由に損害賠償を請求した。
・裁判所は、Xの請求を棄却した。
● 解 説
仕事に電子メール等、インターネットの活用は不可欠な時代になりました。
今回の判例は、その電子メールを会社が勝手に覗いて良いのかという点が争点になりました。
判例では、プライバシーの侵害にあたる例として以下のものを上げています。
①職務上私用メールを監視するような立場にない者の監視
②上記の立場の者でも、合理的な必要性がなく個人的な好奇心で監視した場合
③社内の管理部署などに断りもなく個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合
③について、IT部に依頼するまでの監視方法については相当でないとしながら、他の部分ではプライバシー侵害にまであたらず、一方でXの電子メールの使用は私的利用の限度を超えており、それがYの監視を招いたとして、請求を棄却しました。
この件が裁判まで発展した大きな理由の一つに、電子メールの私用での利用禁止や会社による電子メールの閲読について就業規則に定めていなかったことがあります。
あらかじめ閲読をすることを通知しておけば、プライバシー保護の期待はなくなるので、このようなトラブルは生じないでしょう。
また、最近では情報管理についても会社に厳格さが求められるようになりました。
情報漏えいが生じた場合には、会社もそのリスクを負うことになりますので、これらのルールは必ず整備しておきましょう。
また、SNSへの投稿についても一定のルールを設けることをお勧めします。
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