厚生労働省は、今年7月末頃、平成28年度に、長時間労働が疑われる事業場に対して実施した労働基準監督署による監督指導の実施結果を取りまとめ、公表しました。
前回の平成27年度の監督指導は、月100時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場等を対象として実施されましたが、今回の監督指導は、月80時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場等を対象として実施されました。そのこともあって、監督指導の数は大幅に増えた形になっています。
★ ポイントは、次のとおりです。
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果のポイント〔平成28年度〕
(1) 監督指導の実施事業場:23,915事業場
このうち、15,790事業場(全体の66.0%)で労働基準関係法令違反あり。
(2) 主な違反内容[⑴のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
①違法な時間外労働があったもの:10,272事業場(43.0%)
このうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:7,890事業場(76.8%)
②賃金不払残業があったもの:1,478事業場(6.2%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,355事業場(9.8%)
(3)主な健康障害防止に係る指導の状況[⑴のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,515事業場(85.8 %)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:2,963事業場(12.4 %)
また、今回の監督指導では、「2,963事業場に対して、労働時間の把握が不適正であるため、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導した」ということで、このガイドラインが重要視されていることが分かります。
☆ 厚生労働省では、今後も監督指導の徹底をはじめ、長時間労働の是正に向けた取組みを積極的に行っていくとのことです。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省が、「過労死等ゼロ緊急対策」の一環として、今年1月に策定したガイドライン)」に沿った指導も行われているということで、各企業において、このガイドラインを遵守することが、長時間労働によるリスクを軽減する上で、非常に重要といえます。