【判例】富士運輸事件(定額残業制の有効性)

● 内 容

富士運輸事件(定額残業制の有効性)   東京高裁 平成27年12月24日

 

● 概 要

・会社は、運送事業をしており、従業員はドライバーとして1年8か月勤務した後に退職した。

・従業員は、退職後残業代等が支払われていないとして、会社に請求した。

・会社は、定額残業手当としてすでに支払いがされていると主張した。

・従業員は、そのような説明は受けていないとして納得せず訴えを起こした。

・高裁は、すでに残業代等の支払いを終わっており、従業員に請求すべきものはないとして、従業員の要求を退けた。

 

● 解 説

未払い残業の訴訟において、会社側が完全勝利した珍しい判例です。

ちなみに会社が主張した定額残業手当とは、残業の有無に関わらず一定の残業代を常に支給する制度で、これにより労働者側は残業がない月でも一定の給与を補償されるメリットがあり、会社にとっても求人を出す際に支給額を多めに見せることができる等のメリットがあります。

 

ただし気を付けないといけない点は、実際の残業代が定額残業手当を超えた場合には、その超過分を別途支給しなければならないことで、これができていないと定額残業手当としては、無効とみなされるのが最近の判例の流れです。

 

さて、今回の判例での大きな争点は次の2つでした。

 

①就業規則が周知されていたか?

定額残業制を含め、あらゆる労使間の決まりごとは就業規則で定めて、かつ周知しておく必要があります。 (周知が無ければ定額残業制も無効)

これについては、就業規則と背表紙に書かれたファイルが誰もが閲覧できる場所にあったとして周知されていると判断されました。

 

②定額残業手当の運用は有効か?

この会社の定額残業代は、担当するコースごとに設定されたもので、労働時間との関係からすると合理性がないと従業員側は主張しましたが、実際の残業時間から求めた残業代を上回った額を支給しているので問題はないと判断されました。

 

ちなみに、私の勝手な想像ですがこの従業員は同じような訴訟をこれ以前にも何度か行っているのではないかと思います。

従業員の出入りが多い事業の場合、このようなリスクを踏まえ準備しておく必要がありますね。

 

 

 

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