● 内 容
エステサロンA事件(従業員への損害賠償請求) 大阪地裁判決 平成28年12月13日
● 概 要
・会社はエステティックサロンを運営し、従業員は店長として勤務していた。
・従業員が会社に退職を申し出たところ、就業規則に“3か月前までに退職願いを提出すること”と定められているため、会社は3か月後に退職日を設定し従業員は了承した。
・従業員が、労働基準監督署に相談すると民法には退職は“2週間前までに申し入れる”という規定があると説明を受けた。
・これにより従業員が2週間後に退職日を変更したところ、会社は代替要員の確保などの費用が発生したとして損害賠償を請求する訴えを起こした。
・裁判所は会社が就業規則で定める“3か月前までの退職願いの提出”は無効として損害賠償請求を認めなかった。
● 解 説
日本には法律が、約2000種類あるそうです。
それだけあるので、同じ事柄について複数の法律が絡んできたりします。
この判例の従業員からの退職の申し出については、“労働基準法”と“民法”が絡んできます。
労働基準法では、退職の申出のルールについては就業規則等で会社が自由に定めることができるようになっております。
一方で民法では、従業員はいつでも解約(退職)の申入れをすることができ、解約の申入れの日から二週間を経過することによって雇用関係は終了すると定められています。
今回の判例では以下のどちらを取るかという争いでしたが、裁判所は民法の2週間前に軍配を上げました。
A)就業規則に定めた3か月前の申出
B)民法が定めた2週間前の申出
就業規則は労基法に違反しない範囲で会社が自由に定められるのですが、裁判まで発展した場合に公序良俗に反するという理由で裁判所がその内容を強制的に無効と判断するケースがあるので、就業規則にさえ書いておけば何でもOKという判断はリスキーです。
但し、就業規則に“退職は3か月前に申し出ること”と定めても無駄か?というと、そうではなく会社の思いや考えを明確にして従業員に伝えるという事には一定の意味がありますし、状況によっては裁判所の判断も変わってくると思います。
いずれにしても、就業規則の限界を知りつつ、なぜそのように定めたのかをきちんと説明できるようにしておくことが大事ですね。
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