● 判 例
炭研精工事件(経歴詐称) 最高裁 平成3年9月19日
● 概 要
・会社は中卒、又は高卒を対象にプレス工、旋盤工の求人を行った。
・従業員は、これに“高卒”であり、履歴書の賞罰欄に記載するような“罰はない”として応募し採用された。
・入社から数年後、従業員が“大学中退”であったことと、面接時に刑事事件の公判が継続しており、保釈中の立場であったこと(その後、執行猶予つきの有罪判決が出る)が発覚した。
・会社は、これらの経歴の詐称の行為に対して懲戒解雇を行った。
・従業員は、懲戒解雇の無効を求めて訴えを提起した。
・裁判所は、会社の判断は妥当として懲戒解雇を認めた。
● 解 説
採用面接だけで、応募者を理解することは、とても難しいですね。 さらに、応募者が正しい情報を伝えて来なかった場合には、お手上げです。
そのようなときに会社は、どのような対処ができるかを理解するうえで重要は判例になります。
この判例を通じて以下のポイントが明らかになっています。
① 労働者は信義則上、事実を告知する義務を負う。
② 最終学歴は、労働力評価に関わるだけでなく、企業秩序の維持にも関係する事項であるので、学歴を低く偽ることも許されない。
③ 履歴書の賞罰欄の“罰”は、確定した有罪判決を言うものであり、判決が確定するまでの間には、告知義務は発生しない。
一方で、他の判例では、懲戒解雇に至るときには、「その告知があったら採用していないだろうという因果関係が認められるときに限られる。」とされているので、軽微な詐称でも全て懲戒解雇できるという訳ではありません。
いずれも懲戒処分を科すには就業規則に根拠規定が存在することが前提となっていますので、就業規則に経歴詐称に関する取り扱いが明記されているか確認しておきましょう。
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