● 判 例
大和銀行事件(賞与支給日の在籍要件) 最高裁 昭和57年10月7日
● 概 要
・会社は10月1日から3月31日の査定に基づき6月中旬に賞与を支給していた。
・従業員は、5月31日に退職した。
・会社は『支給日に在籍しているものに対して支給する』とした就業規則に従い、この従業員には賞与を支給しなかった。
・従業員は、賞与の支払いを求めて訴えを提起したが、1審、高裁ともに認められなかったため上告した。
・最高裁は、従業員の上告を棄却した。(会社の主張が認められた)
● 解 説
経営者の立場からすると、賞与は過去の労働に対して支払うというよりも、これからの活躍や離職防止のために支払うという意味合いが強いと思います。
一方で、賞与を貰う従業員の方は、査定期間に在籍していたのであれば賃金と同様に貰う権利があるという意識があります。
今回の事案は、その考えの違いにより、争いに発展しました。
判決では、“賞与”は労働に対応して発生する“賃金”と異なり、労使間の合意や使用者の決定を待って支給の都度確定されるものという考えに基づき、会社側の主張が認められました。
よって、『支給日に在籍している者に支払う』という取り決めがあれば、それに従うということになりますので、このような運用をされている場合、就業規則に明確に定めておくことが必要です。
しかしながら、賞与の支給日間際に退職予定者がいるため、わざと支給日を例年よりも遅らせる等の恣意的な行為は否定されることもありますので、十分にご注意ください。
蛇足になりますが、この判例から労働法における賃金と賞与の位置づけも明確になります。
必ず払わなければならない“賃金”である残業代は払っていないけど、払っても払わなくてもよい“賞与”は出しているという会社は、労働法の観点から見ると優先順位が逆になっています。
未払い残業代の請求が実際に起きた場合には、影響が大きいですのでこの点も気を付けておきましょう!
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