● 判 例
大星ビル管理事件(仮眠時間の取り扱い) 最高裁 平成24年2月8日
● 概 要
・会社は、ビルの管理会社で従業員達は、各ビルに配置されボイラー等の設備の点検や、ビル内の巡回監視等に従事していた。
・従業員らは、月に数回24時間勤務に従事し、連続7~9時間の仮眠時間が与えられていた。
・仮眠時間は、外出や飲酒が禁止され、電話や警報があれば、それらへの応対が求められていた。
・会社は仮眠時間に対して「泊り勤務手当」を支給し、また実作業が発生すれば時間外勤務手当等を支払っていた。
・従業員達は、仮眠時間の全てが労働時間であったとして、時間外勤務手当等の支払いを請求し、最高裁は、労働時間として認めた。
● 解 説
宿直等に伴う仮眠時間は、労働時間か?を争った裁判です。
経営者の感覚からすると、「寝ている時間が労働時間なんて・・・」と言いたくなるところですね。
この判例では、『 仮眠時間でも労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できれば、労働からの解放が保障されているとは言えない = 労働時間 』と判断の柱を定め、実際に実質的に義務付けられていないと認める事情(業務が発生するケースが、ほぼ皆無に等しいなど)もないことから労働時間として認定されました。
一方で賃金については、「泊り勤務手当」が支払われており、これが実作業にあたっていない仮眠時間の賃金であると解釈しました。
判決文の中でも仮眠時間については労働密度が高くないと評価していますから、通常勤務時の賃金と別の賃金を設定することが理にかなっていると思います。
また、労基法には、『監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が労基署の許可を受けた者』について、残業代や深夜手当等を支払う必要がないというルールがあり、許可の基準は次の通りです。
①原則として、通常の労働は許可せず、定時的巡視、電話の収受等を目的とするもの
②相当の手当を支給すること(同種の労働者に対して支払われる1日平均賃金額の3分の1)
③宿日直の回数が、頻繁にわたるものは許可しないこと
④宿直については、相当の睡眠設備を条件として許可すること
このような仕組みを活用しながら、納得感のある賃金設定をしたいですね。
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