【判例】杉本商事事件(時間外勤務手当請求)

● 判 例

杉本商事事件(時間外勤務手当請求) 広島高裁 平成19年9月4日

 

● 概 要

・会社は、精密測定機器等の販売、輸出入を業としていた。

・従業員は、勤続30年以上のベテランで内勤業務に従事していた。

・会社は、全体で行った会議、棚卸等については、残業代を支払っていたが、それ以外で発生した個別の残業については支払いをしていなかった。

・従業員は、未払い分の残業代を請求したが、会社は、『時間外勤務を申請し事前に許可を受けるルールがあったが、従業員からこの申請がなかった。』 『残業も会社が指示したもので関知していない。』として争った。

・裁判所は、会社の不法行為を認め過去3年分の残業代の支払いを会社に命じた。

 

● 解 説

この判例は、裁判所が未払い残業を民法の不法行為と認定した判決として、よくケーススタディーに用いられます。

 

労働基準法によれば、残業代の請求に関する時効は『2年』ですが、民法の不法行為の場合、時効は『3年』となり、遡及される期間が1.5倍になり、当然金額も高くなります。 今回裁判所が、一歩踏み込み民法の不法行為とした理由は以下のポイントです。

① 時間外勤務を黙示的に命じていたにも関わらず、残業代を払っていなかった

② 勤務時間を把握する義務を怠っていた

これを見ると、タイムカード等を導入できていない企業で不払い残業があれば、不法行為とジャッジされる可能性があり、経営者サイドから見るとかなり厳しい判決と言えます。

 

また、残業について会社が具体的に指示をしていなくても、従業員が残業していることを知りつつ、何も言わないということは残業を命じたことと一緒だと判断されました。(黙示的命令)

 

さらに、時間外勤務を事前に申請し、許可を受けるルールが認められなかったのは、

・ルールはあるが、各従業員からほとんど提出されることがなかった

・提出されても、会議・棚卸等限られたもので、かつ経理担当者が代理で作成することが多かった

ということにより、形骸化していると判断されたためです。

このようなルールを就業規則に記載している企業は多くありますが、実態の運用が伴わないと、最終的には否定されると言えます。

 

 

 


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