パワハラ指針が正式決定 該当する例/該当しない例を確認しておきましょう
令和2年1月中旬に、いわゆるパワハラ指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)が官報に公布されました。
パワハラ指針は、大企業でパワハラ防止措置を講ずることが義務化される令和2年6月1日から適用されるもので、パワハラに該当する例/該当しない例が示されていることが話題になっています。その部分のポイントを確認しておきましょう。
―― 職場におけるパワハラに該当すると考えられる例/該当しないと考えられる例――
以下の例は、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提
言動の類型 | 該当すると考えられる例 | 該当しないと考えられる例 |
⑴身体的な攻撃 | ①殴打、足蹴りを行う
②相手に物を投げつける |
①誤ってぶつかる |
⑵精神的な攻撃 | ①人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む
②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う ③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う ④相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信 |
①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意
②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意 |
⑶人間関係からの切り離し | ①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする
②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる |
①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせる |
⑷過大な要求 | ①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
②新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する ③労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる |
①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、 当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる |
⑸過小な要求 | ①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない |
①労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する |
⑹個の侵害 | ①労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
②労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する ★プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要 |
①労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行う
②労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報(左記)について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す |
☆ 上記は典型例です。個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることに留意しましょう。
具体的に、どのような防止措置が必要となるのかなど、気軽にお尋ねください。
70歳までの就業機会の確保などを盛り込んだ法案を国会に提出
令和2年2月初旬に、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。
この改正法案は、雇用保険法のほか、労働保険徴収法、高年齢者雇用安定法、労災保険法などの改正を束ねたもので、企業実務に影響を及ぼす重要な改正が含まれています。
今後の国会での審議の動向から目が離せませんが、特に重要な改正項目を確認しておきましょう。
―――――――― 雇用保険法等の一部を改正する法律案のポイント ――――――――
●70歳までの就業機会の確保=65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の創設 〔高年齢者雇用安定法の改正〕 65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置(定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、創業支援等措置*)の導入のいずれか)を講ずることを企業の努力義務とする。 *創業支援等措置……労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)のことです。 【令和3年4月施行】
●複数就業者の労災保険給付の見直し〔労災保険法の改正〕 複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しを行う。 【公布後6か月を超えない範囲で政令で定める日から施行】
●雇用保険の被保険者期間の計算方法の見直し〔雇用保険法の改正〕 勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算入に当たり、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する(賃金支払基礎日数が11日未満であっても、その労働時間数が80時間以上である月は、1か月として被保険者期間に算入)。 【令和2年8月施行】
●育児休業給付の見直しなど〔雇用保険法・労働保険徴収法などの改正〕 ① 育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付ける。 ② 上記①を踏まえ、雇用保険について、次の措置を講ずる。 ア 育児休業給付の保険料率(1,000分の4)を設定するとともに、経理を明確化し、育児休業給付資金を創設する。 イ 失業等給付に係る保険料率を財政状況に応じて変更できる弾力条項について、より景気の動向に応じて判定できるよう算定方法を見直す。 ③ 上記②の整備を行った上で、2年間(令和2~3年度)に限り、雇用保険の保険料率及び国庫負担の引下げ措置を講ずる。 【令和2年4月施行】
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☆ おおむね予定どおりに成立することが見込まれます。この改正によるその他の改正項目についても、気軽にお尋ねください。