【判例】引越社事件(従業員に対する名誉棄損)

● 内 容

引越社事件(従業員に対する名誉棄損)  名古屋地裁 平成29年3月24日

 

● 概 要

・会社は、引っ越し業を営み、従業員は元従業員らと共に労働組合を組織し、残業代や天引き給与の返還等で団体交渉を行ってきた。

・その後、従業員は社内でのマルチ商法への勧誘活動を原因に退職した。

・会社は全店舗に以下のような内容と従業員の顔写真が印刷された張り紙を掲示した。

この従業員は、悪徳マルチ商法にはまり他の従業員を強引に勧誘したことが理由で退職した

マルチ商法への勧誘が労働組合の本当の目的

組合への勧誘に気をつけろ! 一生を棒に振ることになってもいいですか?

・元従業員と労働組合は、名誉棄損として元従業員に対して300万円、労働組合に対して100万円の支払いを求めた。

・裁判所は名誉棄損を認め、元従業員に対して30万円、労働組合に対して20万円の支払いを命じた。

 

● 解 説

この会社と労働組合の争いは、TVや雑誌にも取り上げられるレベルですのでご存知の方も多いかもしれませんね。

実際にTV放送を見てもかなり激しいやり取りでしたから、理屈を超えた感情的な対立に入ってしまったのでしょう。

 

今回は、労働法と少し遠い話で“名誉棄損”について争われた事例です。

この判例のような社会的評価を低下させる張り紙と名誉棄損の関係は、その行為が“公益をはかる目的”であり、かつ“事実”であれば、名誉棄損には該当しないと判断されます。

 

判決では、公益性については在職中の一時の活動で既に退職しており今後被害を受ける人はいないと考えられる一方、激しい労使紛争から相手の社会的評価を貶めることが目的だと考えられ否定されました。

また、事実についても会社側の主張を裏付けるものがないとし名誉棄損に該当するとの結論になりました。

このように裁判になると、目の前にあることだけでなく背景まで見られるので、敵意などが透けて見えると厳しい結果になると考えられます。

 

判決文を読んでみると労使間の対立の根本は、従業員が起こした事故の費用を本人に負担させ、従業員が退職した後も借金を抱える形になっていることにあるようです。

会社側に有利な取り決めも、実際に争いに発展すると逆効果になることがあるのですね。

 

 

 

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