【判例】専門業務型裁量労働制の否定

● 内 容

専門業務型裁量労働制の否定   大阪地裁 平成27年2月20日

 

● 概 要

・会社は、システム開発を業務としており、従業員はシステムエンジニアとして勤務していた。

・会社は “専門業務型裁量労働時間制” を導入し、その協定を労基署へ提出していた。

・さらに従業員と会社は、制度適用について個別の同意書も交わしていた。

・従業員は、制度導入から3年程度勤務した後、会社を退職した。

・退職後に専門業務型裁量労働時間制は無効であったとして時間外手当等を請求して裁判を起こした。

・裁判所は、従業員の主張をおおむね認めた。

 

● 解 説

“専門業務型裁量労働制” という聞きなれないものが出てきました。

経営者の認識としては、給与は成果に対して払っています。

しかし、労働法の考えは異なり、荒っぽく表現をすると拘束時間に対して給与を支払うことが求められています。

 

しかし、専門性が高く具体的な作業指示ができないような職種の場合に拘束時間(労働時間)で給与の支払いを求められるのは、会社にとって酷なので「出勤したら○時間働いたことにしましょう。」とあらかじめ“合意”して、労働基準監督署に届け出ることで、合意した○時間が1日の労働時間になるというのが、この“専門業務型裁量労働制”という制度です。

これによって、1日10時間働こうが、6時間働こうが、合意した○時間が労働時間となります。

 

今回のケースでは、“1日働いたら8時間働いたとみなす”という合意があり、協定書の届け出もされていました。

しかし、従業側はその“合意の手続き”が正しく行われていないと主張し、8時間以上働いた日については別途残業代を求めました。

 

通常、会社と従業員代表者で労使協定を結ぶ場合、投票などの方法で従業員代表を選ばなければなりませんが、今回のケースでは親睦団体の代表が自動的に労働者代表になっているとして制度不成立と判断されました。

これにより8時間を超えて勤務をした日については、残業代が必要となり、さかのぼって支払うように言い渡されました。

 

会社としては、法律で求められていない個別の同意書まで取っていたため自信があったのではないかと推測しますが、法律で定められた手続きが抜けていたため負けてしまいました。

様々な場面で、労使協定を結ぶことがありますから、十分に気を付けましょう。

 

 

 

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