令和6年10月から、新たに「特定適用事業所」となる事業所では、
これまで健康保険・厚生年金保険の被保険者でなかった短時間労働者のうち、
次の要件に該当する者も、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱う必要があります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金8万8,000円以上(年収106万円以上)
・学生でない
(勤務期間の要件は、通常の労働者と同様の要件を適用)
今回は、「勤務期間の要件」を取り上げます。
――― 令和6年10月からの更なる適用拡大の具体的内容❺/勤務期間の要件 ―――
●勤務期間(使用期間)の要件を確認しておきましょう。
短時間労働者・通常の労働者に共通:2か月以内で定めた期間(1か月、2か月など)を超えて使用されることが見込まれない者は適用除外
→その定めた期間を超えて使用されることが見込まれる場合(2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合)は、当初から適用
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●2月以内の雇用契約が「更新されることが見込まれる場合」とは、次のいずれかのような場合が該当します。
① 就業規則や雇用契約書その他の書面において、その雇用契約が「更新される旨」又は「更新される場合がある旨」が明示されている場合
② 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき使用されている者が、契約更新等により最初の雇用契約の期間を超えて使用された実績がある場合
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☆ 特に短時間労働者については、この勤務期間(使用期間)の要件を確認する必要があります。
たとえ有期雇用であっても、できる限り健康保険・厚生年金保険を適用しようとする要件となっていますので、注意しましょう。
年末調整で一括して定額減税を行うことは可能か?(厚労省の見解は)
令和6年の所得税の定額減税について、対象労働者に対して、
本年6月以後の賃金での定額減税を先送りして年末調整で定額減税を行うことは可能でしょうか?
この点については、そもそも、国税庁が、Q&Aなどで、
まずは、必ず、令和6年6月以後の給与・賞与で、定額減税を実施すべき旨、周知していました。
これを、労働基準法の賃金支払の原則との関係でみてみるとどうでしょうか?
あまり、公にされていませんが、次のような厚生労働省の通達が発出されており、その中で、次のような考え方が示されています。
――― 令和6年分所得税の定額減税に係る申告、相談等への対応について
(令和6年基監発0530第1号)から抜粋 ―――
1 労基法第24条第1項との関係
労基法第24条第1項において、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」こととされ、その例外として「法令に別段の定めがある場合」においては、賃金の一部を控除して支払うことができるとされている。 仮に、対象労働者に対して、本年6月以後の賃金での定額減税を先送りして年末調整で定額減税を行った場合には、6月以後の賃金について、本来、源泉徴収すべき税額より過大な税額を控除することになり、こうした過大な税額の控除については、労基法第24条第1項の例外の要件である「法令に別段の定めがある場合」に該当すると評価することはできないことから、同法第24条第1項違反になるものと考えられる。
2 申告、相談等に係る対応について ⑴ 労働局及び労働基準監督署の関係職員への周知等 上記1の考え方について、労働局及び労働基準監督署の監督部署職員(非常勤職員を含む。)及び総合労働相談員に対して周知するとともに、定額減税と労基法第24条第1項との関係について相談があった場合には、上記1の考え方に基づき対応すること。 ⑵ 本省への報告 定額減税に関して、労基法第24条第1項違反であるとして申告がなされ、これを受理した場合には、申告処理台帳等の関係書類とともに、直ちに、本省労働基準局監督課監督係まで報告すること。
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☆ このような考え方や労働局・労働基準監督署の対応の方針が示されていますので、
「年末調整で一括して定額減税を実施する」といったことは、考えない方がよいでしょう。