● 判 例
福岡セクシャル・ハラスメント事件(セクハラ) 福岡地裁 平成4年4月16日
● 概 要
・会社は情報誌の発行を行い、女性従業員(X)は編集の仕事に従事していた。
・Xは他社での職務経験もあり、男性上司(Y)よりも業務に精通しており、Yを介さず仕事を進める状況からYは疎外感を感じていた。
・Yは自らの地位を守るため、Xの異性関係が派手である等の噂を社内外に流した。
・会社は、業務に支障が出ていることを懸念して2人に話し合いを促し、解決しなければXに退職してもらうと伝え、Xは退職した。
・会社は、Yにも3日間の自宅謹慎と賞与の減額処分を行った。
・Xは人格権を侵害されたとして、Yと会社に損害賠償の支払いを求め、地裁で請求が認められた。
● 解 説
セクハラは良くないということは当然ですが、会社としては予防から実際に問題が起こった際の対処まで、どう関与しジャッジするかは難しいところですね。
今回の判例では、男性上司に賠償命令が下されたところまでは当然として、会社に対しても賠償する義務が負わされました。
会社の責任が問われたポイントを要約すると次の3つになります。
◆上司の行為は、業務の執行につき行われたものなので、使用者である会社にも責任がある
◆会社には働きやすい環境を保つように配慮する義務が、あるがそれを怠った
◆主として女性である従業員の譲歩、犠牲により問題を解決しようとした行為は不公平
2人の不仲を当事者同士の個人的な問題と捉えたところから、失敗が始まっていますが、判決からすると管理職は、部下の人間関係にまで踏み込んで、改善を図る能力が求められます。
このようなスキルが無い人物を管理職に昇進させてはダメということですね。
良い人間関係を築くためには、相手に対する敬意の念などが前提になりますが、そのようなことも就業規則で定めることが大事です。
そのようなルールを定めておかないと、いざ上司に懲戒処分を与えようとしても処分することができず、強引に処分すると次は上司サイドから「不当な処分をされた!」と訴えられるケースも想定できます。
最近は、パワハラに関する問題も多いですので、予防と実際に顕在化した際の対処について、社内で確認することをおススメします。
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