【判例】広島中央保健生活共同組合事件(マタハラ)

● 判 例

広島中央保健生活共同組合事件(マタハラ)  最高裁 平成26年10月23日

 

● 概 要

・組合は、総合病院等を運営し、理学療法士である従業員は副主任として雇用されていた。

・従業員は、妊娠により軽易な業務への転換を希望し、組合はこれを認め配置転換を行うと共に副主任を解任した。

・その後、従業員は育児休業を経て職場復帰を果たすが、復帰した職場には副主任がすでにいたため、副主任には戻れなかった。

・従業員は、この取扱いは男女雇用機会均等法に違反するとし、副主任手当の支払いと不法行為等による損害賠償を求めた。

・高裁は従業員を敗訴させたが、最高裁がこの判決を破棄し差し戻した。

 

● 解 説

妊娠をきっかけにする降格(役職の解任)は、マタニティーハラスメント(マタハラ)か?とニュースでも大きく取り上げられた事例です。

従来、役職の解任については、会社の裁量が広く認められており、高裁まではその前提に従った判決が出ていました。

 

しかし、最高裁はこの常識に一石を投じ、判決の中で『妊娠を理由にした軽易業務への転換を契機としての降格措置は原則無効』と明言しました。

そして、降格措置が認められるケースを次の2つに絞りました。

①自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき

②転換とともに降格をする必要性があり、法の趣旨に反しないと認める特段の事情が存在するとき

異動先や復帰先の部署にすでに副主任がいるから新たな副主任は不要という今回のケースでも②に該当しないと判断されていますので、実態的には①頼りということになります。

 

しかしながら、この判例で最も気になるのが、最高裁まで争うほどの損失が従業員にあったか?という部分です。

取り戻そうとしている副主任の手当は月額9,500円で、弁護士費用などを考慮すると足が出るのではないかと思いますし、この争いのために多くの時間を犠牲にしたことだと思います。

 

結局、人は経済合理性ではなく、感情で動きます。

法的にどうカバーすべきか?と考えるよりも、職場内の人間関係をどう良好に保つべきか?に軸足を置くことが、特に中小企業においては大事な視点ですね。

 

 

 


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