● 概 要
・従業員と会社は、有期労働契約を締結し、途中に数日から1箇月程度の空白期間をはさみながら約10年、短期の有期労働契約を更新し続けていた。
・会社は景気低迷による経営不振を理由に、最後の契約書に『契約を更新しない旨』を明記した。
・これについて会社は複数回の説明会を開催し、契約書への署名にも猶予期間を与えた。
・また相談窓口を設けて、個別に各種相談に応じる旨を周知した。
・従業員は更新しない旨が書かれた契約書に署名し退職届も提出したため、会社は契約書に従い雇止めをした。
・これに対し労働者は、自由な意思で労働契約書に署名し、また退職届を出したのではないので解雇は無効と訴えた。
・最高裁は、会社は十分な説明をして、従業員は特に異議を述べていないため、継続雇用に対する期待利益を放棄したとして従業員の請求を認めなかった。
● 解 説
労働契約法の無期転換ルールが4月よりスタートしました。
具体的には有期労働契約を5年を超えて更新すると労働者が無期労働契約への転換を希望した場合に、会社に応じる義務が生じるというものです。
今回の判例から、契約を更新しない旨を終了したいタイミングで契約書に盛り込めば、簡単に雇止めができるというものではなく、丁寧に説明して本人が納得して署名しても、ここまでモメる問題であるということが学べます。
判決の中で契約書に更新しないと定めることが公序良俗違反になるかという判断について、「ここに至る経緯、必要性、合理性から、公序良俗違反とは言い難い」と言っています。
逆に捉えると単に無期転換を避ける目的や従業員への説明や納得が不十分な状況で不更新条項を入れることは認められない可能性が高いと思われますし、実際に中小企業の場合に、ここまで慎重に手続きを進めることは難しいと思います。
今の段階から、新たな有期労働契約を開始する際には、無期転換も視野にいれた雇用管理の必要があります。 また有期労働契約の従業員を無期労働契約に転換する場合に、支給される助成金もありますので積極的に活用することをおすすめします!
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