● 内 容
医療法人社団事件(高額年俸の残業代) 最高裁判決 平成29年7月7日
● 概 要
・従業員は、医療法人で医師として勤務していた。
・労働条件は、8:30~17:30の勤務で年俸1700万円であった。
・残業代については、21:00以降に働いた場合は別途支給されたが、17:30から21:00までの分は原則、年俸に含むものとして合意していた。
・しばらく勤務した後、従業員は17:30~21:00の分が未払いであるとして訴えを起こした。
・1審、2審は、従業員が自分の裁量で働くことができ、給与も相当高額であり労働者保護に欠ける恐れはないとして従業員の訴えを退けた。
・しかし、最高裁は、年俸1700万円のうち残業代に相当する部分が明らかになっていない以上、残業代が払われたと判断できないとして高裁に差し戻した。(会社の負け)
● 解 説
いわゆる固定(定額)残業代に絡む裁判です。
医師という高所得者の裁判で、かつ1審2審の判断を覆したという点で大きく取り上げられました。
世の中の常識、感覚に近かった1審2審の結論を、最高裁は労働法の原則に基づき「明らかな法令違反がある」という怒りをもって、ひっくり返したという形です。
そもそも固定残業代は、ここ数年シビアな目で見られており、基本給に含むというフワッとした運用ではダメで明確に分離することが求められています。
過去にも地裁レベルで、年俸の高所得者について年俸に残業代が含まれているという主張を支持した判例はありますが、長時間労働そのものを抑制していこうという社会的な機運と今回の最高裁の判決を受けて、そのような判断は今後なくなるでしょう。
判決の内容を見ると、会社側が“医師は労働時間に縛られない特別な仕事だ”という感覚に染まり、何の法的な整備もしていないような印象を受けます。
今更ながらですが、単純に基本給と固定残業代を分離していれば全く問題はなかったですし、専門型裁量労働時間制の導入も可能でした。
「うちの業界は特別だから…」というお話は、ほとんどの業界の方から聞きます。
しかし、世の中の流れは明らかに会社にとってシビアにものに変わってきています。
法的に問題のない働き方をそれぞれの会社で検討する必要がありますね。
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