● 内 容
戸田建設事件(外注先の労働者性) 宇都宮地裁 平成28年9月15日
● 概 要
・会社と1級建築士であるXは、雇用契約でなく業務委託契約を締結していた。
・委託内容は施工図面の作成等で、その関係は15年以上にわたるものだった。
・ある日、Xが仕事場で倒れているところを発見され、脳幹出血により死亡した。
・Xの遺族は、会社とXの契約は実質的に雇用契約であったと主張した。
・その上で労働者であるXに対する安全配慮義務違反があったとして会社に対して損害賠償請求を行った。
・裁判所は、Xは労働者であると認め会社に約5000万円の賠償を命じた。
● 解 説
最近、長時間労働に関する話題が頻繁にニュースで取り上げられ、政府でも「働き方改革実現会議」を立ち上げ、残業時間の上限の設定等が検討されています。
今までは残業代を払っておけばOKだったのですが、長時間労働そのものにメスが入る時代になり、また残業代も平成31年度から中小企業でも60時間を超えたときの割増率が150%になるため、この負担も厳しくなります。
但し、これらのルールはあくまで『雇用契約』の場合に限られるので、例えば『業務委託契約』をしている税理士や社労士の残業時間などは、当然ながら気にする必要がありません。
しかし、『業務委託契約』と『雇用契約』というのは、契約書の表題によって決まるのではなく、以下のチェックポイントから“実態がどうであったか?”で判断されます。
①仕事の依頼に対する諾否の自由の有無
②業務遂行上の指揮監督の有無
③拘束性(時間的、場所的管理)の有無
④労務提供の代替制の有無
⑤報酬の労務対償性
⑥事業者性の有無
⑦専属性の程度
会社はXを出向者として従業員と同様に管理し、事業所への常駐を求めたり、成果でなく実質的に労働時間に対して報酬を支払っていること等から裁判所は『雇用契約』と認定しました。
会社はこの判決を遺族への配慮を理由に受け入れたようです。
当然、『雇用契約』となれば未払い残業代の話に発展する可能性が極めて高く、原告と早急に話を終わらせることは賢明な判断だと思います。
似たような形態の『業務委託契約』がある場合は、チェックポイントに基づいて見直しを図りつつ、健康状態についても常に把握するようにしましょう。
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