● 判 例
三晃社事件(競業避止義務違反の退職金) 最高裁 昭和52年8月9日
● 概 要
・会社は、広告代理店業を営み、社員は営業担当として一定期間勤務し、後に退職した。
・会社の就業規則には、社員が同業他社に転職する場合、退職金を2分の1の乗率で算出すると定められていた。(通常よりも退職金が減額される。)
・社員は、会社を退職する際、同業他社に転職した場合には退職金の半分を返還する旨を約束し、会社から通常の退職金を受け取った。
・その後、会社は社員が黙って同業他社へ就職していたことを知った。
・会社は、約束に基づき従業員に退職金の半額を返還するように求め、訴訟を起こした
・地裁では、会社の主張が認められなかったが、高裁で一転認められ、最高裁で確定した。
● 解 説
会社からすると、退職後に従業員がライバル会社へ再就職すると社内の機密情報や顧客情報等が流出する恐れもあるため、何とか食い止めたいと考えます。
一方で、社員としては、再就職にあたり自分を高く売る必要があるので、必然的に同業他社への就職を希望する形になります。
この相容れない考えは、憲法において、いわゆる“職業選択の自由”が保障されているため、基本的に社員側に軍配が上がります。
その難しい環境下で、会社としては何ができるか?の参考になるのがこの判決文です。
①同業他社への就職を “ある程度の期間” 制限することをもって、直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない。
②退職金が、功労報奨金的な性格を合わせ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。
よって、一定期間に限定して功労報奨金的な部分について減額することは、退職金を支給する会社であれば、検討する必要があります。
但し、同様の判例で、退職金の“全額停止(不支給)”というルールが否定されたケースもありますので、極端な仕組みにならないようにすることお気を付け下さい。
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