【判例】半田労基署長事件(労災不支給の取消)

● 内 容

半田労基署長事件(労災不支給の取消) 名古屋高裁 平成29年2月23日

 

● 概 要

・会社は大手自動車メーカの子会社で自動車用品類の取り付け業務等を行っており、従業員は作業員として死亡するまで約9年勤務していた。

・従業員は、入社3年後にうつ病を発症し、通院していた。

・従業員は、自宅寝室にて致死性不整脈により死亡したところを遺族に発見された。

・遺族は、従業員の死亡は業務によるものとして労災保険からの給付を求めたが、労働基準監督署は業務による死亡ではないとして労災保険の適用を認めなかった。

・納得のいかない遺族は、裁判を起こし地裁では一旦請求を棄却されたが、控訴したところ、高裁で請求を認められた。(労災と認定された)

 

● 解 説

怪我ばかりでなく、脳や心臓の病気また精神疾患などが労災として認定されやすくなり、これらに関する労災請求が年々増えています。

労災として認定するかしないかの判断は、労働基準監督署が行いますが、その判断の柱となる基準は、残業時間です。

心臓疾患の場合、発症の前月に100時間以上、または発症前の6箇月間を平均して80時間以上の残業があれば原則として労災認定されます。

 

今回のケースでは、前月86時間、6箇月平均34時間でしたので、基準に達しないということで労基署においても、地裁においても労災と認められませんでした。

 

ところが、高裁では、『基準を満たせば労災と認定するけれども、逆に満たさなければ労災と認定しない訳ではない。』と労働者保護の観点からの見解を示し、うつ病による早朝覚醒と前月の86時間の残業により、十分な睡眠時間を確保できていなかったため、因果関係があると判断しました。

 

労災に認定されると、会社に従業員を死亡させた責任が生じ、また遺族から慰謝料などを請求される可能性があるので極力避けたいですが、いくら基準を意識して残業時間をコントロールしていても裁判まで進むとどうなるかわからないということが今回の判例から学ぶ点です。

 

その観点から行くと、恒常的に残業が発生している会社はとても危険だと思います。

長期的には、業務の効率化等を通じて残業時間を減らす工夫が求められますし、短期的には健康診断やメンタルチェックによる健康状態の把握、さらに万が一に備えて民間の賠償保険をかけておくことが大切ですね。

 

 

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