● 内 容
仁和寺事件(精神疾患の業務起因性と未払い残業代) 京都地裁 平成28年4月12日
● 概 要
・従業員は、寺の飲食施設で料理長として約8年業務に従事した。
・当初、調理担当3名体制であったが退職があり、入社から7年目には従業員のみとなった。
・その後、調理担当の補充があったものの、月300~400時間の労働が続いた。
・入社から8年目に従業員は、医師からうつ状態との診断を受け、その後出勤しなくなった。
・従業員のうつ状態は、業務災害として労働基準監督署から認定を受けた。
・従業員は、寺に対し勤務不能となり支給されなかった給与や未払い残業代、慰謝料等を請求した。
・寺は、うつ状態になったのは業務以外の理由があり、また未払い残業代については従業員は管理職であったため不要と主張した。
・ 裁判所は、従業員の主張を支持し、約4200万円の支払いを命じた。
● 解 説
最近、お坊さんが未払い残業代を請求し、お寺が支払いに応じるというニースがありましたね。
お坊さんは労働者?と疑問が湧きますが、経営者はそういう時代になったと認識して、人を雇う必要があります。
さて、今回の判例も、お寺が舞台になっています。
判例をみる限り労働実態はかなり過酷で、こんな状態でなぜお寺は裁判まで争ったのか疑問に感じます。
さて、争点になった未払い残業に対して、寺側は『従業員は料理長であり、管理職であった』という主張をしています。
これは労働基準法に管理監督者には、残業代を払わなくて良いと定められていることが背景にあります。
しかし、管理監督者の定義が条文で曖昧に表現されているため、最終的に裁判で白黒をつけるしかないのですが、実際に認められるケースは極めて少なく、特に飲食店の店長や料理長では経営側が勝ったケースはないようです。
また、うつ状態になったことについて、寺側は従業員の実母が他界したことによるものと主張しましたが、むしろ業務多忙のため、その葬儀にも参列できなかったことがストレスと裁判所は判断しました。
お寺で働いているのに、お葬式にも参列できないとは皮肉ですね。
起こるべくして起こった労務トラブルではないでしょうか。
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