● 判 例
ブルームバーグ・エル・ピー事件(能力不足による解雇) 東京地裁 平成24年10月5日
● 概 要
・会社は、アメリカに本社を置き、世界126か所にオフィスを置く通信社である。
・従業員は、約5年間勤続していたが、途中心療内科医による勧めに基づく約1年の休職があった。
・会社は従業員の業務能力に課題があるとし複数回の改善のプランを与えたが、改善が見られなかったため退職勧奨(退職のすすめ)を行ったのち、解雇をした。
・従業員は、解雇は無効であるとして訴訟を起こし認められた。(解雇無効)
● 解 説
一般的に解雇に関する過去の判例を見ると、会社が法律や判例を理解せずに独自の解釈で解雇を行っているものがほとんどで、会社が負けるべくして負けているという印象があります。
一方で、今回の判例は3回も能力の改善プランが実施され、解雇を含む措置についても事前に説明し、解雇の前に退職勧奨を行うなど、かなり用意周到に進められています。
いわゆる『合法的な解雇』というスキームに沿った流れの為、会社が勝ってもおかしくないと感じましたが、改めて能力不足を理由とする解雇の厳しさを認識させられる判例でした。
解雇についは、『客観的に合理的な理由』が求められますから、裁判ではその点について検討されます。
裁判所は以下のような判断をして、客観的に合理的な理由がないとしました。
○記事の配信が遅いとしているが、その制限時間が明確にされている訳でないから、会社はそれほどスピードを重視していないと考えられる。
○記事の数が少ないと言っても、1週間に1本以上配信しなさいなどノルマが明確になっていないから、これも重視していないと考えられる。
この内容を見ると、基準を明確にしたらOKかと思いきや次の言葉で八方ふさがりになります。
○配信記事の閲覧件数が、会社の指定するボーダーラインの500件よりも少ないものが多いとするが、この数字が従業員の能力をはかるうえで有効と言い切れない。
経営者の感覚からすると従業員に勝たせるために裁判所が屁理屈をこねているようにしか見えないでしょうが、本当にそう考えた方が正しいのではないかと思います。
よって、能力不足の社員については、試用期間で見極めて本採用の見送りをしなければなりません。
「いつの間にか試用期間が終わっていた…」とならないようにしましょう。
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