● 判 例
学校法人専修大学事件(打切補償による解雇) 最高裁 平成27年6月8日
● 概 要
・職員(X)は、勤続6年を経過した頃、肩こり症状の悪化により欠勤をするようになった。
・その後、Xの症状は回復せず長期欠勤や休職期間を経て退職した。
・退職後にXの疾病が業務上の理由(労災)であると労働基準監督署が認定したため、大学は退職を取り消しXは復職した。
・復職後3年以上経過しても回復の兆しが見えないことから、大学は打切補償を行いXを解雇した。
・Xは、これに対して打切補償がきちんと行われていないとして解雇無効を訴えた。
・高裁はXの主張を認めたが、最高裁はこれを破棄し差し戻した。(実質的に会社の主張を認めた)
● 解 説
従業員の負傷や疾病が、仕事が原因かプライベート中のものかで労使の立場は全く逆になります。
○業務外の負傷(疾病)の休業 ⇒ 労働者が会社への労務提供の義務を果たしていない
○業務上の負傷(疾病)の休業 ⇒ 会社が労働者への安全配慮義務を果たしていない
今回の事例は、退職後に労災認定され“業務外”から“業務上”へと前提が変わったことが、紛争の根っこになっています。
さて、労基法では、業務上の負傷(疾病)は、会社の責任なのだから療養休業期間とその後30日については、解雇してはいけないと定めています。
これに対して、会社が療養費用を3年間負担した後に平均賃金の1200日分を支払えば、この制限が解除されるルール(打切補償)もあり、大学はこれを適用しました。
一方職員は、療養費用は労災給付によるもので会社が負担した訳でないとして、解雇制限は解除されないと主張しました。
結論は、高裁の判断を否定し労災給付も会社が負担したとみなすということになりました。
難しい法律論はさておき実業に目を向けると、多くの企業では、平均賃金の1200日分を支払うことは難しく、そもそも打切補償を検討することはないでしょう。
この判例から実業に生かすべきポイントは、労災発生予防の重要性ということになるでしょう。
無理な環境での作業や長時間労働を放置すると労災発生のリスクが高まります。
これらの改善について取り組む姿勢を見せるだけも、従業員にとってはうれしいことですし、社員の定着率も高まります。 まず、自社のリスクを確認することから始めましょう。
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