【判例】技術翻訳事件(賃金減額の手続き)

● 判 例

技術翻訳事件(賃金減額の手続き)  東京地裁 平成23年5月17日

 

● 概 要

・会社は、翻訳業を営み10名程度の従業員で構成されていた。

・従業員(X)は、30年近く勤務し、制作部のトップである次長のポジションにあった。

・会社は、業績不振により、役職者の報酬20%カットすることを提案したが、Xは同意しなかった。

・会社は、明確な同意なしに給与を減額して支給したが、これに対してXは抗議をしなかった。

・その3カ月後、会社はXに更なる労働条件の見直し(大幅な賃金低下等)を提示した。

・これをきっかけに労使トラブルに発展し、Xは今までカットされた20%分の賃金についての支払い等を求めて訴えを起こした。

・裁判所は、Xの主張を認め会社に支払いを命じた。

 

● 解 説

この判例での争点は、賃金減額(20%カット)について労働者の承認があったか、無かったかという点です。

当然、労働条件の変更ですから、労働者の承認なしに一方的に賃金をカットすることは認められません。

 

今回のケースは、従業員から賃金減額の合意書を取っていませんでした。

しかし、実際に減額した賃金を支給しても抗議せず、しかも数か月その金額を受け取り続けたということは、減額を承認していたと判断できる(黙示による承認)と会社は主張しました。

 

これに対して裁判所は、会社には労働条件を明示する義務や労働契約内容の理解を促進する責務があるため、書面等により明示的な承諾を求めなかったことについて、合理的な理由の存在等が必要であるとしました。

 

よって、書面による承認なしに就業規則に基づかない賃金の減額を行うことは、原則として許されないと理解できますし、丁寧な説明が求められるということですね。

 

一方で、人事評価に連動した賃金制度の仕組みがあり、その仕組みにのっとり変動させることは、就業規則に基づくものですので、問題はありません。

 

給与を上げる仕組みはあるが、下げる仕組みがないという会社の場合、判例のようなケースに陥る可能性がありますので、業績が好調なときにこそ、賃金制度の整備に取り組んでみましょう。

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