本年6月に、厚生労働省から、平成28年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援するもので、「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。
※ 「個別労働紛争解決制度」は、個別労働関係紛争解決促進法に基づいて、平成13年10月から実施されているものです。各方法の概要は、次のとおりです。
・「総合労働相談」→都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所(平成29年4月現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応。
・「助言・指導」→民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。
・「あっせん」→都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。
平成28年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」のポイント
●総合労働相談、助言・指導申出、あっせん申請の件数はいずれも前年度と比べ増加。
・総合労働相談件数は113万741件で、9年連続で100万件を超えている。
●民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数のすべてで、
「いじめ・嫌がらせ」がトップとなっている。
・民事上の個別労働紛争の相談件数では、70,917件(前年度比6.5%増)で5年連続トップ。
・助言・指導の申出では、2,206件(同7.7%増)で4年連続トップ。
・あっせんの申請では、1,643件(同13.2%増)で3年連続トップ。
また、今回の調査においては、次のような結果も注目されています。
●民事上の個別労働紛争の相談のうち、自己都合退職に関する相談件数が前年度比7.2%増の4万364件となり、解雇に関する相談(前年度比2.7%減の3万6760件)を初めて上回った。→この結果については、「景気がよくなり、人手不足になっていることが背景にある」と分析されています。
☆ “パワハラを含むいじめ・嫌がらせの増加”に“人手不足”、現在の政策課題が表されているような調査結果ですね。
厚生労働省では、今回の状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとのことです。
企業の経営担当者としては、個別労働紛争のトップが「いじめ・嫌がらせ」であるということは知っておきたいところです。このような状況をみると、各企業において、各種ハラスメントの防止対策などに万全を期す必要があるといえそうです。