● 概 要
・従業員(X)は、全国に営業所のある会社で営業職として勤務していた。
・入社時に勤務地域を限定する約束はなかった。
・他の営業所でポストに空きが生じたため会社は異動を命じた。(大阪⇒名古屋)
・Xは、71歳の母(自活可能)、28歳の妻(仕事あり)、2歳の子供との生活を理由に断った。
・会社は就業規則に基づきXを懲戒解雇とした。
・Xは転勤命令そのもの及び転勤命令拒否を理由にした懲戒解雇は無効として提訴した。
・最高裁において転勤命令を有効として、懲戒解雇についても有効とした。
● 解 説
転勤命令について争われた代表的な裁判例です。
1審では、Xを転勤させる必要性はそれほど強くないうえ、単身赴任を強いられることより相当の犠牲を払うものであるから、転勤命令は無効で、それを根拠にする懲戒解雇も無効とし、2審でもその判決を支持しました。
一転、最高裁では就業規則等に定めがあり、現に転勤が行われている状況下では個別の合意は不要とし、以下のポイントで権利の濫用(転勤命令の無効)について判断し、転勤命令は有効でそれに従わないことによる懲戒解雇を有効としました。
①業務上の必要性の有無
②不当な動機目的の有無 (嫌がらせ等を目的としたものでないか?)
③不利益の程度 (通常甘受すべき程度か?)
一方、近年では少子高齢化により育児や介護に対する社会的な認識が変わり、また育児介護休業法改正等もあり上記③の判定基準がより慎重になりつつあります。
就業規則や雇入れ通知書の整備とともに、個々の従業員の家庭環境の把握などの人事管理も大事になってきます。
従業員の家族を巻き込んでの社内イベントなど、色々な仕掛けがあるとトラブルを未然に防止できると思います。 是非トライしてみてください!
Youtubeでも労働トラブルの事例紹介をしています!
『社長のための労務情報チャンネル』
https://www.youtube.com/channel/UC1edyWkq4DhU892haIYytew
こちらも、是非ご覧ください!