● 判 例
関西電力事件(従業員の監視) 最高裁 平成7年9月5日
● 概 要
・従業員ら(X)は、共産党員もしくはその同調者であり、従業員で構成する労働組合の労使協調路線に反対する立場をとる存在であった。
・会社は、企業防衛という名目でXの監視、調査、孤立化等を進めた。
具体的には、他の従業員らへXとの接触を回避する旨の働きかけ、警察との連携、社内行事からの排除、帰宅後の尾行、ロッカー内の私物の写真撮影等
・Xは、会社の内部資料を入手し、自らに対する会社の取り組みを知った。
・Xは、会社に対して慰謝料等の支払い、社内報への謝罪文の掲載を求めて、訴えを提起した。
・1審、2審ともに会社に慰謝料等の支払いを命じ、最高裁で確定した。
● 解 説
会社が大きくなると、様々な思想や信条を持った従業員を抱えることになります。
多少の違いがあっても、『会社も栄え、従業員も豊かになりましょう』という価値観でつながることができれば問題はないのですが、労使は奪い合う敵対的な関係という思想を持たれると辛いですね。
この事件の背景には安保条約改定があり、これに伴う動乱でこの従業員らが企業秩序を破壊し混乱させる恐れがあると考え、会社は管理を強めました。
これに対し裁判所は、従業員らの勤務状況はおおむね良好で、家庭も円満である状況を踏まえると、企業施設を破壊するとか、過激な運動で企業秩序を破壊したり、機密情報を漏えいする等の行為に及ぶ恐れは認められず、その上で会社の行った行為は自由な人間関係を形成する自由とプライバシーの侵害、名誉棄損にあたり、不法行為であると結論付けました。
今の価値観からすると、社内行事から締め出したり、尾行したりなど、やり過ぎかなと感じますが、不正の疑いがある従業員のロッカーや机を勝手に開けることは現在でもありうるでしょうから、プライバシーの侵害という点で注意が必要です。
会社は、この裁判に約25年も期間を費やし、更に負けてしまった訳ですから経済的な損失も甚大であったと思いますし、この裁判を抱え続けた担当者の社会人生活はどうだったかと考えると切ないものがあります。
そう考えると、社風に合わない人材と縁を切る仕掛けは、企業防衛のために必要ですね。
就業規則をガチガチに作るのも一つの策ですが、人事評価制度で社風に合わない人材を評価しない仕掛を作り、長く留まらないようにする方が実効度は高いでしょう。
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