● 判 例
山口観光事件(懲戒事由の追加) 最高裁 平成8年9月26日
● 概 要
・会社は、浴室を主体とする遊戯施設を経営し、従業員(X)は、マッサージ業務に従事していた。
・Xは、電話で翌日から2日間の休暇を会社に請求した。
・会社は、「勝手に休まれては困る。」「明日から来なくて良い。」と述べ、懲戒解雇とした。(8/31)
・Xは、懲戒解雇が無効であると主張し仮処分の申し立てを行った。
・会社は仮処分の答弁書を作成する段階で、Xが年齢を12歳若く詐称していることを知り、これも懲戒解雇の事由であると追加した。(翌年4/11)
・1審、2審ともに、“年齢詐称による解雇”は有効としたものの、“休暇による解雇”は無効としたため、会社が年齢詐称の件を主張するまでの間は、雇用関係にあったとし未払い賃金の支払いを求めた。(9/1から翌年4/11まで)
・会社は8/31の解雇の時点で年齢詐称があったのだから、その時点までさかのぼり解雇を認めるべきとして上告したが棄却された。(認められなかった)
● 解 説
12歳もさばを読むというのは、なかなか大胆ですね。
干支が同じなのでウソがつきやすかったのかもしれません。
さて、今回の判例は、一度懲戒処分を下した後に別の問題行動を知った場合、さかのぼって当初の懲戒処分の理由に追加できるかという点が争点になりました。
○さかのぼりにより8/31で懲戒解雇が認められれば、従業員に一銭も払う必要がない
○年齢詐称を理由に追加した時点(翌年4/11)からの解雇であれば、9/1~4/11までは在籍(自宅待機)となり、その間の給与を支払う義務が生じる。
会社としては、懲戒解雇にするような従業員に対して、全く働いていない期間の給与を支払うことが、どうしても許せなく最高裁まで戦ったのだと思います。
一般的に懲戒処分を下すときには、従業員に理由を示し、弁明の機会を与える必要があります。
よって、さかのぼりの場合は、この弁明の機会がない訳ですから、その観点でも後から理由を追加するのは難しいと解釈できます。
懲戒処分を行うときは、後出しで理由を追加することができませんので感情的にならずに冷静に準備をした上で行うことが重要です。
また、就業規則にその行為が懲戒処分に該当する旨を明記しておくことが絶対条件ですので、運用と制度の両面で準備しておきましょう。
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