令和2年4月1日施行の労働基準法の改正により、賃金請求権の消滅時効期間などが延長されましたが、これにあわせて「付加金の請求期間の延長」も行われています。
―――――――――――――― 付加金の請求期間の延長 ――――――――――――――
令和2年4月1日以降に、割増賃金の未払いなどの違反があった場合、労働者が裁判所に対して付加金を請求できる期間を、5年に延長しつつ、当分の間は、その期間を「3年」とすることとされました。
確認 付加金制度(労基法114条)
裁判所は、次の①~③の規定に違反した使用者または次の④の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。
①解雇予告手当(労基法20条1項)
②休業手当(労基法26条)
③割増賃金(労基法37条)
④年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項) |
延長前 違反があった時から「2年以内」にしなければならない。
延長後 違反があった時から「5年以内(当分の間は、3年以内)」にしなければならない。
☆付加金の支払いを命じられるのは、一般的には、違反内容が悪質な場合とされていますが、その支払を命じられた場合は、2倍に相当する額(未払金の額+付加金の額)の支払いが必要となります。特に、上記の③割増賃金・④年次有給休暇中の賃金には、未払いが生じることながないように注意しておきたいところです。
被用者保険の適用拡大などを盛り込んだ年金制度改正法が成立
令和2年5月下旬に、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されました。
特に重要な改正項目を確認しておきましょう。
―――――――――――――― 年金制度改正法のポイント ――――――――――――
1.被用者保険の適用拡大
① 短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件を段階的に引き下げ。 【現行「500人超」→令和4年10月から「100人超」→令和6年10月から「50人超」】
② 5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の資格を有する者(政令で規定)が法令の規定に基づき行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加。 【令和4年10月~】
2.在職中の年金受給の在り方の見直し
① 高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定する仕組みを導入。 【令和4年4月~】
② 60歳台前半の在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から「47万円(令和2年度額)」に引き上げ)。 【令和4年4月~】
3.受給開始時期の選択肢の拡大
現在60歳から70歳の間となっている老齢厚生年金・老齢基礎年金の受給開始時期の選択肢を、「60歳から75歳の間」に拡大。 【令和4年4月~】
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
① 確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げ。 【令和4年5月~】
② 確定拠出年金のうち企業型DC加入者のiDeCo加入の要件を緩和。【令和4年10月~】
③ 確定拠出年金の受給開始時期の選択肢を拡大。 【令和4年4月~】
④ 確定給付企業年金の受給開始時期の選択肢を拡大。 【公布日~】
⑤ 確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲を拡大(100人以下→300人以下)。 【公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日~】
5.その他
「短期滞在外国人に対する脱退一時金の支給上限年数の引き上げ(3年→5年)【令和3年4月~】」 など
☆ 企業や年金受給者などに大きな影響を及ぼす改正項目が多いため、施行までにある程度の期間が置かれていますが、どのような改正が行われようとしているのかは早めに押さえておきたいところです。必要であれば、他の改正項目も含め、説明させていただきます。