【判例】大王製紙事件(懲戒解雇の有効性)

● 判 例

大王製紙事件(懲戒解雇の有効性)  東京地裁 平成28年1月14日

 

● 概 要

・従業員は、30年近く雇用され、子会社の取締役や本社の経営企画本部の課長等をしていた。

・従業員は、経営陣と敵対する顧問を通じて、会社の不正会計やマネーロンダリング等を行っているとの内部告発文を行政やマスコミに公表した。

・会社は、これを受け従業員を降格処分とした。

・さらに、子会社へ出向と北海道の営業所の所長としての勤務を命じた。

・従業員は、これに応じなかったため、会社は従業員を懲戒解雇とした。

・従業員は、これらの処分は無効として提訴した。

・裁判所は、降格処分は有効、懲戒解雇は無効とした。

 

● 解 説

世間を騒がせたニュースであり、記憶に新しい方も多いかもしれません。

地裁の判決では、痛み分けの結果になりました。

 

まず、降格処分は、以下のポイントから重すぎるとは言えないとして認められました。

・内部告発の内容が会社の名誉を著しく傷つけるものであった

・内部告発を通じて会社の秘密が、かなり多く漏えいした

・経営陣の失脚という背信的な目的があり会社の秩序を乱した

 

一般的に内部告発は、公益通報者保護法によって守られるイメージがありますが、伝聞や憶測に基づく内容で客観的資料が乏しく、かつ経営陣の失脚という不当な目的があったと判断され、保護の対象とはならなかったようです。

 

一方で、出向命令の拒否による懲戒解雇は認められずに無効となりました。

出向先の営業所は部下もおらず、今までのキャリアからすると明らかに不相応であり、降格処分とセットで行われたことを考えると、事業上の必要性というよりも実態的に嫌がらせとしてやったものという判断をされました。

不当な目的の出向命令は無効で、そうなると配置転換命令の拒否自体が成り立たなくなるので、当然懲戒解雇は無効という立て付けです。

 

判決文から従業員側にかなりの悪意があるように見えますので、降格処分でなく真正面から懲戒解雇処分として争うと違う結論になっていたかもしれませんね。

会社は控訴したようですので、高裁では異なる結論がでるかもしれません。

 

 

 

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