● 判 例
フィルハーモニー管弦楽団事件(解雇無効) 横浜地裁 平成27年11月26日
● 概 要
・従業員らは、楽団(以下、会社)に演奏者として約30年間雇用されていた。
・従業員らは、労働条件等について会社と対立的な関係にあった。
・多数派の労働組合があったが、従業員らは別に労働組合を結成し団体交渉を行っていた。
・会社は、社内の評価委員会で執務態度や技量に問題があるとし、従業員らを解雇した。
・従業員らは、この解雇を無効として提訴した。
・裁判所は、従業員らの主張を認めた。
● 解 説
労働基準法では、解雇をするためには30日前に予告しなさいと定めています。
これを普通に読めば、30日前に言えば解雇は自由にできると受け取りますが、そこには、大きな落とし穴が待っています。
それは、この「30日前予告」というのは、解雇を行う手続きにについて定めているだけであって、解雇そのものが妥当か否かは、まったく別の問題ということです。
よって、解雇が妥当でなければ100日前に予告してもダメなのです。
解雇というものは、労働契約を会社側が一方的に解除することですが、労働者の生活の糧を奪う行為になりますので、司法は簡単には認めません。
今回の判例で会社は、就業規則の解雇事由の次の項目に該当するとして解雇を行いました。
①技能が著しく低下した時や楽団が任命した音楽的責任者からの指摘があったとき
②演奏態度が悪く、非協力的で業務に不熱心なとき
裁判所は、①については技能の低下というなら入社時の水準を明確にしておく必要があるし、責任者からの指摘についても、求める水準を明確にしていることが必要としました。
また、②については態度が悪かったとしても、いきなり解雇でなく、もっと軽い処分により反省の機会を与えるべきとして、解雇を無効としました。
①の否定理由を見ると水準を明確にすれば良いと考えますが、その場合はその水準の妥当性の確認が次に待っており、極めて厳しく判断されることが予想されます。
結局、明らかな違法行為や無断欠勤等がなければ解雇で争っても会社には勝ち目はないと考えた方が良いでしょうか。
就業規則を整備して②で裁判所が求めることをきちんと実施すると共に、評価制度等で非協力的な人は昇給しない形にして自主的に会社を去るようにしておくことが必要です。
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