本年5月、「ある地方裁判所で、大手流通グループの関連会社(警備業)の男性社員が宿直の仮眠時間は労働時間にあたるなどとして未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の判決があり、裁判長が未払い残業代と付加金の計約180万円を支払うよう同社に命じた」という報道がありました。
また、「ある都道府県労働局が、勤務中に長時間の待機を求められ心筋梗塞で死亡した男性運転手について、労災を認めなかった労働基準監督署の決定を取り消し、逆転認定した」という報道もありました。この都道府県労働局は、労働基準監督署が労働時間と認めなかった待機時間を労働時間と認め、1か月間に過労死ラインを上回る133時間程度の残業があったと判断し、労災認定したとのことです。
具体的な状況にもよりますが、仮眠時間や待機時間も、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される場合には労働時間として取り扱われることになります。
このことは、過去の最高裁判例でも示されており、また、厚生労働省が「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環として策定し普及を図っている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にも示されています。
労働時間とはどのような時間をいうのか?そのガイドラインの「労働時間の考え方」を紹介します。
◆◆ ガイドライン/労働時間の考え方 ◆◆
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次の①から③のような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであること。また、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。
① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
② 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
③ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間