● 内 容
NHK堺営業センター事件(委託契約の労働者性) 大阪高裁判決 平成28年7月29日
● 概 要
・Aさんは、NHKと放送受信契約の取次業務等について委託契約を締結していた。
・委託契約は3年単位の契約で、更新により約15年継続していた。
・NHKは、Aさんの業績不振を理由に3年単位の契約の中途で解約した。
・Aさんは、自分は実態的に労働契約法上の労働者にあたるので中途解約は認められないとし、労働者としての地位の確認と貰えたはずの報酬等を請求し訴えを起こした。
・地裁では、労働契約法を類推適用し中途解約は認めないとして報酬等の支払いを命じた一方で、契約期間満了による契約の終了であれば問題はないと判断した。
・この判決にどちらも不満であったため、それぞれが控訴し高裁で再度争われた。
・高裁は、労働契約法を類推適用する必要はないとしてNHK側が勝利した。
● 解 説
会社が個人事業主と“委託契約”を結ぶケースはよくあると思います。
社労士や税理士との契約も、まさにこの形態になります。
“委託契約”は“労働契約”と違い相手を社会保険へ加入させる必要もありませんし、解雇の難しさに悩むこともないので、会社にとって魅力的な契約形態です。
よって、従業員をあえて個人事業主として“委託契約”を結ぼうと考える会社やそれを提案するコンサルタントもいます。
しかし個人事業主側がメリットを感じているときは平和ですが、不満を抱くと今回のように実は“労働契約”でしたという主張をされるリスクがあります。
この主張が認められると、隠れていた社会保険料や残業代、さらに消費税の負担が生じるので、一気に大きな支出になります。
今回、地裁と高裁で判決が異なったように、この線引きはとても難しいですが、主な着眼点に“業務遂行上の指揮監督”の程度があります。
今回の判例は、この程度が低いため“委託契約”と判断されました。
例えば、税理士との“委託契約”で社長が税理士さんの業務遂行についてあれこれ指示をすることはないでしょうから、これをイメージするとわかりやすいでしょう。
よって会社が望む仕事の進め方があり、その通り行っているか逐一チェックしたいという場合は、“委託契約”は控えて“労働契約”にしましょう。
しっかりと育成して社会保険料や残業代以上の成果を出してもらうように導くことが組織作りの王道ですね。
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