● 概 要
・従業員(X)は、トランジスターの品質及び歩留りの向上を所管する係の作業に従事していた。
・会社は、Xによる手抜き作業の追完、補正のためXに残業を指示したが拒否された。
・これに対し、会社は出勤停止14日の懲戒処分に付したが、始末書の提出を拒むなど反省の態度を示さなかった。
・過去2年半余りの間にも、Xは合計4回の懲戒処分を受けていたため懲戒解雇した。
・Xは、懲戒解雇無効を主張し訴えを提起したが、会社側の主張が認められた。
● 解 説
残業の拒否が懲戒処分に該当するか?が問われた代表的な裁判例です。
1審では、労使協定で定めている時間外労働を命じることができる場合の例示が具体性に欠けるので、そもそも残業命令が無効として従業員側の主張(解雇無効)を認めましたが、高等裁判所がこれを取り消し、争いの場は最高裁判所に移りました。
最高裁では以下の点で判断し、時間外労働命令が合理的でないとは言えない(≒合理的である)として会社の主張を認めています。
① 36協定の締結・届出があること
② 就業規則の内容が合理的であること
ちなみに36協定(労働基準法第36条に定められた協定のため、一般的にこの名称で呼ばれています。)について解説をすると…
本来、1週40時間、1日8時間を超えて働かせることは労働基準法で禁止されており、これに違反すると、事業主は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
そのため、残業が発生する可能性のある会社は、この36協定で残業させる必要のある具体的事由や残業させることのできる時間を従業員側の代表者と合意し労働基準監督署に届出て罰則を免除してもらう必要があります。
さらに、大手外食チェーン店で36協定の届出はされているが、従業員側の代表者を選出するプロセスが不適切と指摘を受けた例もありますので、この辺りにも十分にご配慮下さい!