平成27年度における国民年金・厚生年金保険などの公的年金の額は、前年度との比較では、約0.9%引き上げられることになりました。
しかし、この年金額の引き上げ幅は、物価や賃金の伸び(2.7~2.3%)には追いついておらず、実質的な年金の価値は低下(目減り)したことになります。
このような年金額となったのは、特例水準の解消とマクロ経済スライドの影響です。
なお、公的年金は、基本的に、2か月分をまとめて偶数月に支払うこととされていますので、改定された年金額で支払われるのは、6月からとなります。
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[解説〕
公的年金については、過去に、物価が下落したのに年金額を据え置いたことがあります。その経緯から、法律が本来想定している水準(本来水準)よりも高い水準(特例水準)で支給が行われてきましたが、その特例措置は、平成26年度で終了することになっていました(平成26年度の時点でその差は0.5%でしたが、その分を引き下げて、特例水準の解消が完了)。
平成27年度からは本来水準での支給となるわけですが、その仕組みにおいては、物価や賃金の伸びによる年金額の上昇を、現役世代の減少や年金受給期間の伸びを考慮して1%ほど低く抑えるルールが適用されます(マクロ経済スライド)。
そのため、物価・賃金の変動の分(+2.3%を使用)から、特例水準の解消の分(▲0.5%)とマクロ経済スライドによる調整の分(今回は▲0.9%)が差し引かれ、0.9%の上昇にとどまったわけです。
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◆◆ 平成27年度の年金額 ◆◆
<老齢年金の年金額(月額換算)について>
平成26年度(月額) | 平成27年度(月額) | |
国民年金(老齢基礎年金〔満額〕:1人分) | 64,400円 | 65,008円(+608円) |
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額*) | 219,066円 | 221,507円(+2,441円) |
* 厚生年金は、夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)42.8万円)で40年間就業し、
妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準。
☆ 厚生労働省は、厚生年金で平成32年度ごろまで、基礎年金で平成55年度ごろまでは、マクロ経済スライド
による年金額の調整が必要であるという見通しを立てており、その間は、年金は目減りしていくことになります。年金制度の維持のためには仕方がないことかもしれませんが、年金受給世代の方々にとっては厳しい時代に突入しました。