● 概 要
・会社はタイヤ製造を業とし、従業員は工場の作業員として勤務していた。
・従業員は、深夜に酩酊した状態で民家に侵入し逃走するも逮捕された。
・従業員は、住宅侵入罪として罰金2,500円を課せられ、そのうわさが広まった。
・会社は、「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した」として就業規則に基づき懲戒解雇にした。
・従業員は、懲戒解雇無効を訴え、第1審、控訴審ともに従業員の主張が認められた。
・会社は、不服として上告したが、引き続き従業員の主張が認められた。(懲戒解雇は無効)
● 解 説
会社の秩序を維持し、良い労働環境を守るために、服務規律や懲戒のルールは大切ですね。
一方で、勤務時間外での従業員の行為に対して、会社が懲戒権を持つか否かという点は、曖昧なところだと思います。
この判決は、少し古いですが最高裁判決ですので、今日においても大きな影響を与えるものです。
裁判の経緯では勤務時間外の行為なでの会社が懲戒処分を下す権限がないと門残払いする訳でなく、会社が「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した」と主張する部分について、従業員の行為が本当に“著しく汚した”に該当するか、罪と罰のバランスは適当かを精査する流れで進められていますので、勤務時間外の行為にも会社の懲戒権が及ぶことが理解できます。
その結果、裁判所では次の観点から、懲戒解雇はやりすぎとの結論に至っています。
① 会社の組織、業務等に関係のない、いわば私生活の範囲内で行われたこと
② 従業員が犯した犯罪の程度が軽いこと
③ 従業員の職務上の地位は、作業担当の工員で指導的なものでないこと
よって②や③から、もっと重大な犯罪行為であった場合や、従業員が役職者等であった場合は、異なる結論になる可能性があるでしょう。
しかし、実際に犯罪までは予想できなかったとしても、このような行為をする社員は、普段からお酒のにおいを漂わせて出勤する等、素行に問題があったはずで、その段階できちんと指導してあげることが会社としては、重要だったのではないでしょうか。
お酒に絡むセクハラなどは、よく聞く話です。
ノミニケーションを通じて、部下の“酒癖”も把握しておくことが、大切なリスク対策かもしれませんね。
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