前回、「雇用保険法等の一部を改正する法律」の全体像を紹介しましたが、今回は、そのうち、その一部が本年の8月から実施される「介護休業等に係る制度の見直し」にスポットを当てます。
介護休業等に係る制度の見直し
仕事と介護の両立支援制度の見直し〔育児・介護休業法、雇用保険法関係〕
次のような制度の見直しが行われます。
実施時期……1の規定は平成28年8月1日、それ以外の規定は平成29年1月1日
規 定 | 改正前 | 改正後 | |
1 | 介護休業給付の給付率の引き上げ | 休業開始時点の賃金の40% | 休業開始時点の賃金の67%に引上げを行う |
2 | 介護休業(93日:介護の体制構築のための休業)の分割取得 | 原則1回に限り、93日まで取得可能 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業の分割取得を可能とする |
3 | 介護休暇(年5日)の取得単位の柔軟化 | 1日単位での取得 | 半日(所定労働時間の2分の1)単位の取得を可能とする |
4 | 介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務) | 介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能 | 介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする
〈補足〉事業主は、以下のうちいずれかの措置を選択して講じなければならない。(措置内容は現行と同じ。利用の要件を緩和) ①所定労働時間の短縮措置(短時間勤務) ②フレックスタイム制度 ③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ ④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度 |
5 | 介護のための所定外労働の免除(新設) | なし | 介護終了までの期間について請求可能な権利として新設する
〈補足〉 ・当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等は、労使協定により除外できる。 ・1回の請求につき1月以上1年以内の期間で請求でき、事業の正常な運営を妨げる場合には事業主は請求を拒否できる。 |
〈補足〉その他、省令の改正により、介護休業等の対象家族の範囲の拡大も行う予定。
☆ 8月から介護休業給付金の給付率が引き上げられます。介護休業の期間については、法令上、賃金の支払い義務はありませんが、もし、支払うとしても、賃金と介護休業給付金との合計が、休業時点の賃金の80%を超えないように、給付金の支給額が調整されます。つまり、賃金を支払う場合は、その額を、休業時点の賃金の13%(80%-67%)とすると最も効率的ということになります。