【判例】イオンディライト事件(仮眠時間の労働時間性)

● 内 容

イオンディライト事件(仮眠時間の労働時間性) 千葉地裁 平成29年5月17日

 

● 概 要

・会社は警備業を営み、従業員はショッピングセンターなどの警備業務に従事していた。

・従業員は、24時間拘束で途中に仮眠を数時間とる勤務体系で働いていた。

・会社は仮眠時間を休憩時間として取り扱っていたが、従業員は仮眠時間は労働時間であるとして残業代の支払いを求めた。

・会社はこれに応じずに、その後配置転換を命じた。

・従業員は、未払い残業代と不当な配置転換の慰謝料を求めて裁判を起こした。

・地裁は、配置転換に関する慰謝料は認めなかったが仮眠時間も労働時間だとして残業代等180万円の支払いを命じた。

 

● 解 説

経営者の方々から、始業前の準備時間などについて「これは労働時間ですか?」と聞かれることがあります。

労働法では、“労働時間とは使用者の指揮監督下にある時間”と解説されている程度で、実はフワッとしています。

よって、こうなったら労働時間で、こうなったら労働時間ではないと明確に線引きすることができず、究極的には個別に裁判をしないとわからないという回答になります。

 

今回のケースは、仮眠時間が労働時間になるか(賃金の支払いが必要か)の争いでした。

経営者の感覚としては、寝ている時間に賃金を払うことに抵抗があると思いますが、裁判では冒頭の“指揮監督下”にあるかという基準に当てはめて検討します。

この判例では、仮眠時間といっても制服を着たまま寝せられており、発報があればいつでも駆け付けることが求められ、実際に一定の割合で発報があることから、労働時間と認定しました。(労働からの解放が保障されていないので休憩時間でない)

 

裁判で残業代の未払いがあると認定されれば、会社は窮地に追い込まれます。

まず、制裁金にあたる“付加金”を本来の残業代に上乗せされ、計算した残業代の倍近い金額を払う可能性が生じます。

また、他の労働者にもこの結果は筒抜けなので、続々と請求を受けることになります。

単純に10人いれば、一桁増えるので今回のケースではあっという間に1800万円の支払いが必要になります。

 

個別に話し合いで解決したときに支払う金額とは、文字通り桁違いの額になりますので、経済合理性だけで判断できるのであれば裁判は絶対に避けるべき選択ですね。

 

 

 

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