【判例】東京地下鉄事件(懲戒権の濫用)

● 判 例

東京地下鉄事件(懲戒権の濫用)  東京地裁 平成27年12月25日

 

● 概 要

・従業員は、約6年間鉄道会社に雇用され、駅の係員として勤務していた。

・従業員は、出勤時に電車内で痴漢行為を行った。

・従業員は、逮捕され罰金20万円の略式命令を受け罰金を納付した。

・会社は、これを受けて従業員を諭旨解雇とした。

・従業員は、この処分が重すぎるとして提訴した。

・裁判所は、従業員の主張を認め権利濫用として解雇は無効となった。

 

● 解 説

多くの鉄道会社ではチカン行為を撲滅しようと取り組み、女性専用車両を導入したり、いたるところに啓蒙ポスターを貼ったりしていますね。

このような取り組みをする一方で、従業員がチカン行為を行い逮捕され、罪が確定した場合に会社はどのように対応すべきでしょうか?

 

当然、会社の取り組みに背く行為であるし、何しろ被害者や社内外に示しがつかないということもあり、何らかの懲戒処分を下す必要があります。

この判例では、諭旨解雇という処分を下しました。

一般的には妥当な処分と感じるのではないかと思いますが、ご紹介の通りこの解雇は無効となりました。

 

裁判所が次の4つをポイントとして挙げ、行為に対するペナルティが重すぎると判断しました。

➀痴漢は許されない行為だが、今回のケースは比較的悪質性が低い。

②マスコミ報道などは無く、企業秩序に与えた影響の程度は大きくない。

③今までの従業員の勤務態度に問題はなかった。

④示談をしようとした。(被害者は応じなかった)

 

また、諭旨解雇という結論に至るプロセスについて、本人へ弁明の機会を与えなかったため、手続き上にも見過ごせない問題があると指摘しました。

 

一般の会社員の行為ならまだしも、鉄道会社の従業員の行為について今回の判決には通常の感覚からすると大きな疑問が残りますが、それだけ正社員と解雇の問題について司法の場で争うことはハードルが高いということです。

 

解雇をする場合には法律論のみでなく、「今までお世話になりました。」という結末にどう導くかというシナリオ作りが必要です。

 

 

 


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