【判例】長谷工コーポレーション事件(留学費用の返還請求)

● 概 要

・従業員が勤務先の留学制度を利用して会社の費用で2年間アメリカの大学院に留学した。

・帰国後、2年5か月で退職した。

・留学に先立ち、従業員と会社は、一定期間を経ずに退職した場合は会社が負担した留学費用を従業員が返却する旨を書面にて交わしていた。

・会社はこの書面に基づき従業員に対して留学費用847万円の内、学費分467万円の返還を求めて提起した。

・会社側の主張が認められた。

 

 

● 解 説

本判決は、会社が負担した留学費用の返還請求について下された初めての判決です。

争点は、労働基準法の第16条に規定される“賠償予定の禁止”に該当するか否かという部分になり、この条文は「○○をしたら、または○○をしなかったら、会社にいくらの違約金を払え」等のルールをあらかじめ決めてはダメといっています。

 

この条文に違反した場合は、労働者の転職の自由等を妨げるものとして『6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金』という重い罰則が科せられています。

 

さて、今回の例では、留学制度への応募は本人の自由な意思によるもので、留学自体も社員の業務に直接役立つ訳ではない(会社にメリットがない)一方で、社員にとっては転職したとしても有益な経験となる。

よって、留学費用については会社が負担するか従業員が負担するかは労働契約と直接関連はなく、別に定めることができる。という解釈がされました。

 ⇒労働基準法第16条は関係ない

 

その上で、一定の条件に応じて返還するとの約束をしているのでそれに従えという結論です。

 

ただし、同様の事案でも返還を認めない判決もあります。 (新日本証券事件等)

御社でも研修等について似たような運用をされている場合、

従業員の自由意思によるものか (業務命令でない)

業務性があるか (業務との関連性が低い)

という視点で一度確認されることをお勧めします!

 

 

 


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